【とある催事にて…】

先日FMラジオでアメリカの作曲家、フォスターの特集番組を放送しておりました。

その中でこれもアメリカの合唱団、「ロジェー・ワーグナー合唱団」の演奏が流れてきて、数年前、勤務しているホールで行われた、この合唱団の演奏会のことが思い出されてきました。

 

そのコンサートは、12月にホール主催公演として行われたもので、時節柄クリスマスソングや、フォスターの歌曲を集めたプログラムでした。

私は若いころに、この合唱団がブラームスの合唱曲を歌ったレコードを気に入って聞きこんでいたことがあって、ファンというほどではありませんが、初めて生で聞けるチャンスを個人的にとても楽しみにしていました。

そしてホールに到着したメンバーはアメリカ人らしくみなさん明るく快活で、リハーサル中の打ち合わせをはじめとして、リハーサルの合間にも、数名のメンバーといろいろと楽しく話ができました。

特に、ひとりだけパーカッション奏者としてツアーに参加していた年配の女性は、彼女の出番がそれほど多くなく、本番中も舞台袖で私と並んで待っている時間が長かったこともあって、たくさん話しかけてくれました。 日本ツアーはこの日が最終日であること、コンサートが終わったら全員バスで成田へ移動、翌朝一番で出国すること。ただし、彼女だけは昨日のホテルに財布を忘れてきてしまったのでひとり別行動、新幹線でいったん東京へ帰らないといけないそうで、「あらら―、それは大変!」といったような会話でした。

さて、パーカッションといっても、彼女が演奏していたのは鈴やトライアングルといったような手持ちの小物ばっかりだったのですが、プログラムが8割方終わったところで、彼女は長机の上に並べてあった楽器類を大きなバッグにかたづけ始めました。それでもう出番は終わったのかなと思い、

「もう日本での仕事は全部終了ですか?」と笑いかけたところ、

彼女は人差し指を立てて、

「One more!(あと一曲あるのよ)」との返事。

その最後の出番とは、アンコールのクリスマスソングで、小さな鈴かなにかだったかを鳴らしながら、ステージをニコニコと歩き回って曲を盛り上げる、というものでありました。

そういえば、彼女が教えてくれたことでひとつ驚いたのが、

この日本ツアーに合唱団が連れてきていた男性ピアニストは、まだ17歳の高校生だ、ということで、彼の両親もツアーに同行していて舞台袖で息子の晴れ姿を眺めておりました。

お父さんによると、将来は音楽大学への進学を考えているが、現在の高校は一般の学校なのだとか。どれほどの経歴を持ったピアニストなのかはわかりませんが、現役高校生をツアーの伴奏者として抜擢するとは、さすがアメリカ太っ腹!というか、かなりビックリですね。

 

このように、舞台裏方としての仕事をしていると、演奏家本人をはじめ、裏方スタッフ、また外来演奏家の場合は奥様やガールフレンドを同行していることも多く、そういう方々と舞台袖で話をする機会がよくあるものです。話の内容は、いわゆる取りとめのない世間話みたいなものですが、長年裏方をやっていると、かなりの有名どころと話をする機会も結構ありました。

そして今回のFM番組のように、久しぶりにその演奏家の演奏や名前を聞いたり、テレビで姿を見かけるような機会があると、その時のことが生き生きと、懐かしく思い出されるものです。

 

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